そう思い、テーブルからゆっくりと出て来た。


さっきの地震で崩れたものがないかどうか確認しながら這い出した時、壁の一面がなくなっていることに気が付いた。


さっきまでそこにあった巨大な本棚も、姿を消している。


代わりに、同じくらいの広さの部屋が出現していたのだ。


神崎は新しく出現した部屋の中にいる。


「こっちに来てみろって!」


神崎は興奮気味に俺を手招きしている。


「なんだこれ……」


唖然としてしまって言葉が続かない。


一体全体、この屋敷はなんなんだ?


壁の奥の通路にしても、まるで忍者屋敷じゃないか。


一歩足を前へ踏み出した時、膝あたりに何かがぶつかった。


立ちどまって確認してみると、それはソファの横に置かれていた銅製の置物だ。


「あれ……?」


確か、ソファに座る前まで女性は真っ直ぐに立っていたハズだ。


それが今は斜めに傾いている。


しかし像は倒れることなく、まるで台にくっついているかのように見えた。


「あ、もしかして、さっき俺が……?」


眠気に負けてしまいそうになったとき、足になにかが当たった感触がした。


それは、この像だったのかもしれない。


俺は右手で銅像の体を直立に戻してみた。