「お兄ちゃん、なにしてるの?」


6時半を回ったところで足音がして、優奈が起きて来た。


すでに準備されている朝食を見て目を丸くしている。


「おはよう優奈。ちょっと早く起きちゃったから、作って見た」


そう言って胸を張る。


優奈は目を輝かせて食卓を見つめている。


「すごいじゃん! 目玉焼きまで作るなんて!」


「俺だって、このくらいのことはできるんだぞ」


今までやったことはなかったけれど、褒められたことで調子に乗って鼻を伸ばす。


「ちょっとコゲてるけど、これくらいなら大丈夫じゃない? お母さんたちきっと喜ぶよ!」


そんな優奈の声で目が覚めたようで、寝室から両親が出て来た。


2人とも寝ぼけ眼だけれど、俺が準備した朝食に驚き、そして喜んでくれた。


最近は神崎に叩き起こされることが多かったから、こうして家族で朝ご飯を食べることが久しぶりな気がする。


「どういう風の吹き回し?」


母親がコップに牛乳をつぎながら聞いてくる。


「たまたま早く起きたから、作ってみようと思っただけ」


本当は全然眠れていないのだけれど、そこは伏せておいた。


「ハジメもなかなかやるじゃない。最近は友達が毎日のように来てくれるようになった、安心したわ」


母親は意味深げにそう呟き、俺を見つめた。


俺は聞こえなかったフリをして、自分の席に座ったのだった。