どこかで聞いたことのある名ゼリフに、神崎がキョトンとした表情になる。


目が点、とはきっとこのことだ。


「あのなぁハジメ」


ゆったりとした口調の神崎に、俺は肩で呼吸をして自分を落ち着かせた。


そうだ、神崎の言い分もあるはずだ、どんなに理不尽な言い分でも、聞いてやる必要はある。


これは俺の問題ではないのだから、俺の気持ちを一方的に押し付けただけでは解決しない。


「なんだよ、お前の言い分は?」


「お前がマザコンだってことはよぉくわかった」


「なんだと?」


「それに、かなりの妄想癖がある。作家を目指してるのか?」


「作家?」


「もし、プロの作家を目指してるならその妄想は最高だ。俺はまるで悲劇のヒロイン、いや悲劇のヒーローだ。そんなものがあるかないかは別として、茶川賞受賞間違いなしだ」