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強制的に取り付けられた約束場所のファミレスは、相変わらず女性客でごった返していた。
俺と神崎の2人が席に座ると、痛いほどに視線を感じる。
「アイスコーヒーを」


「俺も……同じやつで」


何度来ても慣れることのない空間に、同じ注文しか繰り返せない俺。


「で、準備ができたって?」


運ばれて来たコーヒーには口を付けず、お冷を飲んで俺は訊ねた。


「そうなんだ。決行は明後日の昼間だ」


「昼間か。お手伝いさんがいるんじゃないのか?」


俺は電話越しの柔らかな声色を思い出していた。


「もちろん、それもちゃんと考えてある」


「どうするんだ?」


「まずはこれを見てくれ」


神崎はテーブルの上に2枚のチケットを置いて行った。


それは宮島へのバス旅行のチケットだった。


「まずは今日中にこのチケットを俺の母親に渡す。一泊旅行だから、主婦仲間と一緒に羽を伸ばしてくればいい」


「へぇ、これを使って家を空けてもらうのか」


俺は神崎のやろうとしていることが理解できて言った。


神崎はうんうんと頷いている。


「そう。父親はその日の前日から出張で出かけてるから、これで両親は家からいなくなるわけだ」


なるほど。


「じゃあ、残りはお手伝いさんの問題だけだな」


「俺も出かける予定にしてある」



「は?」