「そうだけど……なにかあったのか?」


優奈に言われていたことなんて一瞬にして忘れて、俺は聞いた。


『準備ができたぞ!』


「準備……? ピクニックにでも行くのか?」


今日はいい天気だし、風も心地いい。


家族で出かけるのはもってこいの日だった。


「優奈。神崎はこれから家族でピクニックらしい」


「えぇ!? じゃあ遊びに来られないの!?」


優奈はぷぅっとふくれっ面になってしまった。


『何ってんだハジメ! 《神崎邸、秘密の扉大作戦その2》に決まってるだろ!』


受話器の向こうで嬉しさに跳ねまわっている神崎の様子が浮かんできた。


『今すぐファミレスに集合!』


「え? おい、ちょっと!!」


俺の言葉なんて聞く間もなく、電話は切れてしまった。


俺は茫然として立ち尽くし、切れてしまった電話を見つめる。


「流ちゃん、今日も来られないの?」


しょぼくれた声で、優奈が呟いたのだった。