「今日も流ちゃん来ないんだけど、お兄ちゃんなにかしたんじゃないの?」


目が覚めてベッドの上、優奈の顔が見えたと思ったとたんにそう言われていた。


俺は大あくびをして上半身を起こして「何もしてないよ」と答える。


右腕がひどくダルいのは間違いなく、昨日神崎が三脚を忘れたせいだ。


「嘘ばっかり! また流ちゃんにひどいこと言ったんでしょ!」


「言ってないってば」


俺の背中を両手で叩いてくる優奈にしかめっ面をして答える。


そもそも、神崎への言葉使いが雑になるのはあいつ自身の責任でもあると思っている。


「そんなに神崎のことが気になるなら、電話してみればいいだろ」


昨日だって俺に無断で神崎の電話番号を調べたのだ。


優奈が今更いちいち許可を取るとも思えなかった。


しかし、優奈は 途端にシュンとした表情になってしまった。


「どうした?」


「電話したけど、来れないって言われたの」


「は? もう電話したのか?」


俺の質問にコクンと頷く優奈。


「それで断られたと」


また、頷く優奈。


「それなら来るわけないだろ」


俺はもう1度大きく欠伸をして、ベッドへ逆戻りする。


しかし、それは優奈によって遮られてしまった。


俺が寝るべきベッドの上に上がり、胡坐をかいて座ったのだ。


「流ちゃんが私からの誘いを断るなんてありえない!」