「おぉ。頑張れよ」


俺はそっぽを向いて苦いコーヒーを口に入れる。


舌に広がるどくとくの苦味と、鼻に抜ける香りに酔いそうになる。


神崎はそんなコーヒーをいかにも美味しそうに飲み干すと、勢いよく立ち上がった。


「それじゃあ、俺は用事があるからもう行くな」


「は!? いやいや、待てよ!」


さっきまで暗かったのが嘘のように早足で出口へ向かう。


俺はそんな神崎の後を大慌てで追いかけた。


こんな場所に置いて行かれるなんて地獄だ!


「どうした? まだコーヒーが残ってただろ?」


振り向き、追い掛けてきた俺に笑顔を見せる神崎。


「一緒に帰るに決まってんだろ!」


不本意だけれど、俺はそう叫んだのだった。