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メルヘンチックなレストランの客はカップルや女同士ばかりで、案の定男二人の俺たちは見事に浮いていた。


しかしそんなことよりも、女性客の大半が神崎へ視線を向けていることの方が気になって、腹が立って仕方なかった。


ウエイトレスが可愛らしいクマのコースターに水を置いてくれると、俺はそれを一気に飲み干す。


乾いた心を潤してくれるのは、今のところ水だけだ。


ピンク色のエプロンを着た女性店員が「なにになさいますかぁ?」と、甘いマスクで訊ねてくるので、俺は一気に緊張してしまった。


背筋がピンッと伸びて冷や汗が流れる。


「俺はアイスコーヒーで」


神崎は馴れた様子で、メニューも確認せずに答える。


「お、俺も、同じで」


本当はコーヒーは苦手なのだけれど、声を裏返しながら注文した。


「お前、こういう店ってよく来るのか?」


「ん? まぁ、普通に?」


首を傾げつつ返事をする神崎を尊敬してしまう。


「1人で考え事をするときとか丁度いいんだ。こういう場所は、誰も話しかけてこないからな」


神崎の言葉に俺はひきつった笑みを浮かべた。


それは大男が1人で可愛らしいお店にいるから、誰もが敬遠しているだけなんじゃないだろうか。


そういうところを気にしないのが神崎らしいのだけれど。


注文したアイスコーヒーが運ばれてきて、俺はようやく本題を切り出した。


「で、監視カメラのモニターはどこにある予想なんだ?」


俺はソワソワと周囲を見回しながら神崎へ聞いた。


「一番妥当なのは父親の書斎だ」


「あぁ、そっか。そうだよな」