「人間掃除機」


そう呟き、軽く笑う。


「何か言ったか?」


「別に」


俺はそう返事をして、キレイに掃除された床へ腰を下ろした……。

☆☆☆

それから、何時間経っただろうか?


気が付けば雨の音は小さくなり、古びた窓の隙間から濡れたコンクリートの匂いが風と共に入ってきた。


何気なく広げたエロ本は、案外面白かった内容のためほとんど読みつくしてしまった。


そのエロ本から顔を上げると、神崎の背中が映った。


ずっとあの体勢のままピクリとも動いていない。


すごい集中力だ。


「おい、雨やんだぞ」


そう声をかけながら立ち上がり、神崎の肩に手をかける。


「ん? あぁ」


短い返事だけをして、顔を上げようとはしない。


神崎の尻を見るとまだ埃がついたままで、俺は軽く苦笑した。


「もう充分録画できたんじゃないのか?」


「そうか?」


そう言って、ようやく神崎がビデオカメラから顔を上げた。


当然ながらその目は充血していて、可愛くないウサギが出来上がっていた。


それとほぼ同時に雨のやんだ空から光が差してきて、廃屋の中を明々と照らし始めた。


「よし、それじゃあ行くか」


その言葉を合図に、俺はようやくカビ臭い屋敷から開放されたのだった……。