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土砂降りの雨の中たどり着いたのは、公園の裏にある小さな廃屋だった。


廃屋といってもそんなに気味悪いものではなく、昔ながらの木製の大きな家で、どこか懐かしさを感じた。


その家に無断で入るのはいささか気が引けたのだが、このまま雨に打たれていては風邪を引いてしまう。


幸い、玄関の鍵は壊れて開いたままになっていたので入らせてもらうことにした。


「おじゃまします」


誰もいないと解かりきっているけれど、家へ向けて一言そう声をかけてから、靴を脱ぐ。


「おい、靴脱いでどうするんだよ」


先に家に入り込んでいた神崎が、呆れたような声を出す。


見れば、神崎は土足で上がり込んでいるのだ。


けれど、それもそのはず。


ここは廃屋なのだ。


天井は雨漏りしているし、床には見たこともないキノコが生えている。


積もり積もったホコリの上には、ネズミの糞が無数に転がっているし、到底素足で上がれるものではなかった。


俺は脱いだ靴をもう一度履き、「土足でおじゃまします」と言い直して、高い敷居をまたいだ。


「こっちだ」


神崎にせかされて、俺は廃屋の中を進んでいく。


外観通りの大きな家で、畳のかび臭い匂いがそこら中に充満している。


家の中をカタカナのロの字に廊下が走ってるのがわかる。


ロの字の内側がすべて和室、外側に台所、トイレといった水場が設けられていた。