俺は、その指が向けられた方向へと視線を移す。


けれど、激しい雨に視界が遮られ、そこに何があるのかハッキリと見ることはできない。


雨の中にボンヤリと浮かぶソレは、遊具に見える。


公園なのだから遊具があるのは当然だ。


だけど、それが今何の関係がある?


「なんだよ、遊びたいのか?」


「違う。その先だ」


更に首を傾げる俺に、神崎が言った。


その先?


遊具の先に見えるのは、ただの木。


人工的に作られた林のようなもので、それ以外にはなにも見当たらない。


「ほら、もっと、もっと先だ」


「もっと先?」


「あぁ」


林の向こう側は、残念だがここからは見ることが出来ない。


「見えないものを指さされたって、わかるわけがないだろ」


仏頂面でそう言うと、


「それもそうだな」


と、何度か頷く。


そして……「じゃ行くか」と一言。


「は? 行くってどこに?」


俺が聞き終わる前に、神崎は土砂降りの雨の中、走り出した。


「なんだよ! どこに行くんだよ!!」


また、何の説明もなしに勝手に動き回る神崎に、俺は大きく舌打ちをする。


いつもいつもいつもいつもいつも……なんなんだよ、あいつはぁぁぁ!?


心の中で文句を言いながらも、俺は意を決して、雨の中、神崎の後を追ったのだった……。