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数分後、俺たちは小さな公園の、臭いトイレの中にいた。


「だから降るっていったろ」


トイレの外では大粒の雨が痛いほど降り注ぎ、稲妻と雷鳴が激しい会話を繰り広げている。


なんとか大降りになる前にトイレに駆け込んだのだが、それでも服はびしょ濡れだ。


「仕方がないから、雨宿りでもしよう」


神崎が今閃いたような口調で言う。


「今してるだろ」


「ハジメ、細かいところまで突っ込むようになったな」


「お前がもっとまともな事言えば突っ込み役を降りられるのにな」


と、嫌味タップリにイーっと歯を見せて笑ってやる。


そんな俺たちの会話をせせら笑うように、雨はどんどん強さを増していく。


空の明るさは雲によって遮断されたままで、下手をすればこれから一日降り続けるかもしれない。


俺の中に不安がだんだんと膨らんで来た時、神崎が鞄から何かを取り出した。
小型のカメラだ。


「なんでそんなもの持ってんだ?」


「なんだ、もう忘れたのか?」


神崎は、準備をしながら呆れたような声を出す。


忘れた? 何が?


「監視カメラの録画映像を、これから撮るんだよ」


「……はぁ?」


俺は瞬きをして聞き返す。


「監視カメラがあったのは、部屋の外だった。廊下と部屋のドアが映っていればそれで問題ない」


「待てよ。ドアが映ってなきゃいけないのに、なんでここで録画の準備してんだよ」


「ハジメ知らないのか?」


今度は、キョトンとした口調でそう聞いてきた。


俺は、ただ首を傾げる。


神崎は、公園のある場所を指差し、ニッと笑った。