俺は、畳み掛けるように言葉を続ける。


「自分だけ分かったような顔して、どんどん先に進んで。ちゃんと説明しなきゃわからないだろ?」


雨が音を立てながら、俺と神崎の間にカーテンを作る。


そのカーテンの向こうで、神崎が立ち止まり、軽く肩を震わせた。


「おい……?」


神崎は、無言のまま肩を震わせ続けている。


まさか、泣いてないよな?


以前、夕食時に突然泣き出したことを思い出し、俺は不安になる。


泣くようなこと、何か言ったっけ?


右手を伸ばし、神崎の肩に触れようとした瞬間、急に大声を上げて笑い出した。


俺はギョッとして手を引っ込める。


「秘密主義、確かにそうだな!」


「何がおかしいんだよ……」


雨は、強くなったり弱くなったりを繰り返しながら、確実に俺たちの体から熱を奪っていく。


近くで青い光が走り、遠くで雷鳴が聞こえる。


ゆっくりこっちへ近づいてきているのかもしれない。


「見えそうで、見えない。つい、グラビア雑誌を傾けちゃう感じ」


「……は?」


それはいつだったか、優奈と3人でいたときの会話だった。


「人間の好奇心は色んな場所で発揮される。ハジメ、今そうだろ?」


見透かしたように神崎に言われても、俺は首を傾げるしか出来ない。