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その日の午後、早速神崎が俺を外へ連れ出した。


《神崎邸、秘密の扉大作戦その2》の話をしたくてうずうずしているように見える。


空が時折ゴロゴロと低い音を立てて、黒く分厚い雲が俺たちの頭上で雨を降らせる準備をしている。


「おい、降るかもしれないぞ」


傘の準備などしていないので、降り出したらあっという間にずぶぬれだ。


けれど、前を歩く神崎は降り向きもせずに「丁度いいじゃないか」と言った。


「丁度いい?」


「あぁ、これくらい雲ってなきゃ『秘密の部屋』の雰囲気は出ないからな」


『秘密の部屋』の雰囲気?


神崎が一体何を言っているのか、俺には理解できない。


理解できないままに後を着いていくと、ついにポツポツと雨が降り始めた。


言わんこっちゃない。


「おい、どこに行くんだよ。一旦コンビニにでも非難しよう」


「もうすぐ着く」


その言葉にうんざりしてしまう。


雨は小雨からどんどん勢いを付けてきている。


「お前、いい加減にそういうのやめろよ」


「は? 何が?」


「何がって……、そういう秘密主義だよ」


その言葉に、ようやく神崎が一度振り向いた。