そう、これは映画であり、小説の世界の話である。


実際に俺たちがこんなこと、できるわけがない。


しかし、神崎はそんなこと気にもとめずに、俺の肩を何度か叩いてきた。


優奈がいるから声には出さないが、『この方法で、監視カメラを欺く事が出来る』と言っているのが、よくわかる。


俺はそれに気付かないフリをして、目の前のパンに噛み付いた。


ビデオ映像か……。


いいアイディアだとは思うけど、監視カメラの映像をどこで確認しているのかわからないのだから、まずはモニターの場所から探さなければならない。


その上、あの部屋を録画し続けている本物のビデオを回収し、偽物とすり替えるのだ。


簡単じゃないぞ。


できるか?


そんなことを考えていると、今朝の食パンは、やけに固く……いや、重たく感じられた……。