「202ページ?」


「あぁ、読んでからのお楽しみだな」


神崎が、軽くウインクをして見せた。


言いたいことはわかるが、男に至近距離でウインクをされる身にもなってほしい。


俺は思わず「気持ちわりぃ」と呟く。


「お兄ちゃん、こんな本を読んでるから気持ち悪くなるのよ」


優奈は真顔でそう言った。


「ん? あ、いや、そうじゃなくて」


「朝からホラーだなんて、信じらんない」


「だから、それは関係なくて」


「どうせなら、ミステリーの大御所の作品を読みなさいよ」


「優奈、お前の読む本は偏りすぎてるんだよ。ミステリーばっかり読んでるから変なことに首を突っ込むようになるんだ」


「それは大いなる偏見だと思います」


優奈がピッと挙手をして発言する。


伸ばされた手は指先までピンと天に向かって伸びていて、自分の意思の強さを主張していた。


「あぁ……まぁ、確かにそうかもしれないけど……。ワトスン君はどう思う?」


助けを求めるように、神崎へ視線を投げかける。


神崎は口いっぱいのパンを無理矢理飲み込み、「ワトスン君ってなんだ?」と首を傾げてきた。


知らねぇのかよ!


学年トップが聞いて呆れる。


読んだ事はなくても、名探偵ホームズくらい知ってるだろ普通。