ここが神崎の家だと知ったのは今日が始めてだけれど『引っ越してきた』の意味が理解できない。


「ここはオヤジの家なんだ」


「はぁ……」


俺は首を傾げて神崎を見つめる。


自分の父親の家に引っ越してきた? ってことはどういうこと?


「再婚したんだよ、俺の母親」


神崎が、何の感情も込めずに一言言った。


「あ、そうなんだ……」


こんな時に咄嗟に気のきくセリフが出てきたらどれだけ楽だろう。


だけど、16歳の俺は『再婚』の意味を考えるだけで頭が一杯だった。


再婚ってことは、元は結婚していたけど、離婚したってことになる。


そしてまた結婚をした。


だから『再婚』。


頭では理解しているのに、なんだかこんがらがってきた。


「離婚、してたんだ」


俺はどうにかそう言った。