「は?」


突然の問いかけに俺は首を傾げる。


「俺たちにとっては簡単な、どうでもいいような問題を、解きたいと思うか?」


「思うわけないだろ」


「だろ? だから、自分たちで簡単には解けない問題は面白いんだ」


「これは宿題ほど簡単なもんじゃないぞ」


「ハジメ、お前は自分で問題集が解けないくせに『宿題が簡単』だなんて偉そうだな」


そう言い、神崎は声を上げて笑う。


本当に、いつも一言多くて腹がたつ。


だけど、言い返すことが出来ない、甘ったれた自分に一番腹がたつ。


難しいから面白い。


困難だから逃げずに乗り越える。


それがこいつにとっては当たり前なのだ。


前にも言っていた、『忘れようとするからトラウマになる』んだと。


「最初からなんでもできる奴なんていない。だから頑張るんだ」


俺が黙っているので、凹んだのだと勘違いした神崎が、背中を叩く。


「わかってるよ。お前を見れば、それくらいわかる」


俺は神崎の手を振り払って答えた。


何度か咳払いをして、口を開く。


「で? その部屋に入る為の手段は何だ? お前のことだから、ある程度の事は考えてるんだろ?」


もう少し、ほんの少し、こいつに付き合ってやってもいいかもしれない。