「もちろん。その部屋をもう一度確かめたいって気持ちは、よくわかる」


「そうだろう、気になるよな」


「だけどな、最初に言った通り、地下室があろうがなかろうが、俺は手助けをするつもりはない」


もう一度、クギを刺す。


すると、神崎は一瞬口元を上げて笑い、俺の目の前に問題集を突き出してきた。


「なんだよ……」


「この問題集、まだまだ先は長いな」


「数式がわかったんだから、俺だってできるよ」


「ハジメ、一つの数式で問題集全部解けると思ってるのか?」


「……へ?」


「解けるわけないだろ、数式は沢山ある。どの問題にどの数式を使えばいいか、わかるのか?」


ニヤニヤと、まるで獲物を横取りしたハイエナのような笑みを浮かべる神崎。


その笑みによって、金縛りに合ったように動けなくなる。


なんて、卑怯なヤツなんだ。


最初からこれが目的で、俺に勉強を教える、などと言ってきたのだ。


中途半端に手助けをしておけば、俺は簡単に甘い蜜を吸ったのと同じことになる。