「いや、だけど微妙なんだよな……」


右手を顎に当てて眉間にシワを寄せ、俺を無視して呟き続ける神崎。


「何だよ、教えろよ」


自分の好奇心に勝てず、そう言って話を急かす。


「本来、同じ音を出すはずのものが別の音を出した」


「何だって?」


「音を発するものがコップだったとすれば、中身の量で音は変化する。だけど……」


「だけど?」


「それが、床、だったらどうなる?」


神崎の疑問符が、俺の右耳に入り、脳味噌を通り抜けて左耳から外へ排出された。


床でも、コップの音と同じことだ。


中身によって、音は変化する。


つまり、床なのに音が変化した部分は……中身がない。


空洞、ということ。


それを更に単純な言葉に言い直せば……「地下室」俺は呟き、神崎を見る。


「そうなるな」


「あの部屋に、地下室が?」


「ん~、だからそこが微妙なんだよ」


グシャグシャと短い髪の頭をかきむしり、大きなため息をつく。


そうか、さっきから釈然としない態度だったのは、この地下室の有無がわからないからだったのだ。


「何であの部屋に地下室があるなんて思ってるんだ?」


「ハジメ、お前がキッカケだよ」


「俺が?」