「普通に『あり得ない』って言えよ」


「し・か・も!」


俺の言葉は無視して話を進める。


「なんだよ」


顔をズイッと突き出してくるので、俺の鼻先に神崎の鼻先がくっつく。


正直、気持ち悪い。


「あの大きさにしてあの軽さも、答えはノーだ」


その言葉に、男二人で持つような大きさのダンボールを思い出す。


そうだ。


たしかにあれは見た目に反して軽かった。


「中身があまり入ってなかったからじゃないのか?」


「そう。そういうことだよ!」


パチンッと指を鳴らし、ようやく俺の前から神崎の顔が離れる。


……というか、そういうこと、の意味がわからない。


理解できずにまぬけな顔をしている俺に、神崎が一つ咳払いをし、説明を始めた。


「つまり、あの山積みのダンボールは、ただの大人のオモチャ隠しじゃない」


自信満々に言う神崎に、俺はますますわからなくなる。


あのダンボールに入っていたのは、間違いなくオモチャだ。


それ以外のものは何一つ入ってなかった。


「ダンボールの中のオモチャは、数えるくらいしか入ってなかった。そのオモチャのために、あそこまで必死で隠すとは思えない」


「……と、いうことは?」


「そう。ダンボールは目くらましの可能性が高いんだ。もっと別のものを隠すために用意されたものだ」


神崎の言葉が、どこか遠くに感じる。


頭の中がクラクラとメマイに襲われて、イジメられていた頃と同じような憂鬱感が胸に重くのしかかる。


まさか、まさかこいつは……。


神崎の次の言葉を聞かないため、俺は人指し指を自分の両耳に突っ込み、ギュッと目をとじる。


聞こえない。


俺は全く聞こえないぞ。


知らない。