朝食のパンを食べたテーブルで、俺と神崎が向き合って座っている。


空気は重く、エアコンから排出される冷たい風の音がやけに大きく聞こえてくる。


二つのコップに入れられた麦茶まで、互いに向かい合い次に誰がどんなアクションを起こすのかと息を潜めて待っているように見えてくる。


その時、神崎がおもむろに右手を伸ばしてきた。


一瞬、俺は身を固くする。


右手は俺の少し手前で止まり、テーブルの上のスナック菓子を一つつまみ、戻って行った。


「菓子かよ!!」


拍子抜けし、思わず突っ込む。


「うん?」


パリパリとスナック菓子を食べながら、首を傾げる。


こいつ、人をおちょくってんのか?


「大切な話があるんだろ?」


「ん……まぁな」


「何だよハッキリしないな」


「何ていうか……微妙なところなんだ、これは」


「微妙?」


聞き返しながら、俺は眉を寄せる。


微妙という言葉事態が微妙で、どのくらい『少し』という意味なのか理解できない。


微量ならわからないでもないが、『微妙』という言葉は『微妙』すぎる。


「あぁ。しかも、今回は名探偵優奈ちゃんを、巻き込むわけにはいかなさそうなんだ」


「だから、その微妙な話をしろよ」


俺が急かすと、神崎は腕組みをして目を閉じ、「うぅ~ん」とうなり声を上げた。