けれど、そのほとんどをウトウトしながら過ごしていたため、問題集は今でも真っ白だ。


「うわ、できてねぇ」


そんな問題集を覗き込み、神崎が呆れたような、驚いたような声を上げた。


「数学は苦手なんだよ」


「ハジメがこんなにバカだとは知らなかった」


俺の隣で腕組みをして、「はぁ~あ」と、わざとらしくため息をつく。


バカで悪かったな。


そんなもん、最初から自他共に認めてるよ。


認めているため文句は口にしない。


が、気分がいいものではないので、白紙の問題集を神崎から見えないように手で覆い隠す。


「教えてやろうか?」


「いいってば」


「そんなんじゃ、いつまで経っても終らないぞ」


その言葉に、俺は返事に詰まる。


確かに、この調子で宿題が進むとは到底思えない。


教科書や参考書を引っ張り出してみても、元々さっぱり理解できていないので無意味な努力に過ぎなかった。


そうなると……、俺は神崎の顔を見た。


こいつに頼るか? 俺が?


心の中の甘えを、ダメだ。


と首を振って抹消する。


「この問題の数式は教科書56ページに載ってる」


「へ?」


「数学はな、ただ数式に当てはめて計算すればいいだけなんだ。それが苦手なのは、どの数式をどの問題使えばいいか理解できてないから。数式がわかってないと永遠に解けることはないってことだ」