優奈が出て行った後のドアを見ながら、「若いっていいっすねぇ」と、神崎がしみじみとしたオヤジ口調で言う。


俺はテーブルの上の食べかすをティッシュでふき取りながら「お前だって若いだろ」と、苦笑した。


「いやいや、やっぱり高校生と中学生じゃ違いますわよ、奥さん」


「誰が奥さんだよ。井戸端会議なんてしてないぞ」


先ほどまでとは少し違う口調の女言葉に、俺はしかめっ面を神崎へ向ける。


「いやぁ、だって見たでしょ今の優奈ちゃんの小ぶりなヒップ」


「優奈の体をそんな目で見るな! 巨乳好きはどうしたんだよ」


怒鳴りながらティッシュを神崎へ投げつけた。


神崎はそれを簡単にキャッチし、そして続ける。


「巨乳はもちろん大好きよ? だけどボンキュッボンって体は若さが足りたいのよね」


「若さ?」


「そ。巨乳にクビレとなると、どうしてもある程度年齢いっちゃうでしょう? 最近の子は発育がいいけど、童顔に巨乳はマニアックすぎて受け付けないのよね」


困ったわぁ。


と、右手を右頬にあてて『夕食の献立に悩む奥さん』のごとくため息を吐をもらす。


ため息が出るのは俺の方だ。


「お前のくだらない悩みなんかどうでもいい」


「あら、冷たいのね」


「俺はこれから勉強するんだ」


「勉学に励むなんて素敵ね」