そう心に誓い、荒い息を吐き出した。


けれど、問題集ができていない、という事は本当に問題で。


俺には呑気に遊んでいる暇はない、という事だ。


夏休みはそう簡単には終らないものの、後回しにして登校直前で必死になるのは嫌だった。


「優奈が遊びに行ったら、お前も帰れよ」


俺は冷たい声で神崎に言う。


「え? なんで?」


「今日中に問題集を片付けるんだよ」


「だから、それは俺が教えてやるって」


「俺は自分の力で難問を突破したいんだよ。他力本願じゃ世間の波にも逆らえないだろ」


最後の、『お前みたいな奴には解からないだろうけど』という言葉をグッと喉の奥で押さえつける。


「難問ってほどの問題集でもないけどな」


神崎は何食わぬ顔で、一言余計なことをぬかす。


「俺にとっては難問なんだよ」


声を低くし、多少の怒りを込めて言うと、神崎は軽く肩をすくめてそ知らぬ顔をした。


そんな俺たちを尻目に、優奈が時計を確認してから慌しく動き始めた。


三人分のパンの皿とバター、ジャムを両手に抱え、「このお皿洗ったら、私そのまま遊びに行くからね。流ちゃんバイバイ」と、スキップをしそうな足取りで部屋を出る。