けれど、多少冷えようが友達とのプールを優先させるのは元気な証拠だった。


「ところで、夏休みの宿題はできたのか?」


優奈が遊びに行く前に、わざと現実的な問題を突きつけておく。


本当は、自分だって人の事をとやかく言えた立場ではないのだが、そこは兄としての身勝手な権限というか。


「当然、できてるわよ」


「へぇ? 珍しい」


「お兄ちゃんと一緒にしないでよね。私の行動にはすべて計画性があるんだから」


そう言い、勝ち誇ったようにフフンと鼻で笑う。


単純に、嫌な宿題を先に終らせて、それから遊び回る。


というだけの計画だ。


それでも、問題集が全く手付かずという俺は何も言い返すことが出来なかった。


「ハジメの勉強なら俺が見てやる」


何かを見透かしたようなタミングで神崎が言う。


「出た。優等生の嫌味な余裕っぷり」


手伝ってもらえると非常に助かるのだけれど、なぜだかこいつにだけは素直に『助けてほしい』と言えない自分がいる。


「その余裕のある優等生が、手取り足取り教えてあ・げ・る」


いつかのように耳に息を吹きかけられそうになり、俺は素早く身をかわした。


「あらやだ、逃げなくてもいいのに」


「お前な、すぐに女言葉になるのやめろよ」


「どうして? 家庭教師といえば密室での保健体……」


「どんだけ古いネタ持ち出してんだよ!」


神崎がすべてを言う前に、突っ込みを入れて阻止する。


こいつと密室で保険体育? もしそんな事になったら今直ぐ舌噛んで死んでやる。