そして、それを聞いた神崎は一瞬にして瞳を輝かせ、「お姫様、当然ビキニを……?」などと鼻の下を伸ばしはじめた。


「人の妹を汚い目で見るな!」


俺が力一杯後頭部を叩いてやると、神崎はその勢いで額をテーブルに打ち付けた。


……バカ。


優奈の笑い声を聞きながら、俺は本気でそう思う。


なんでこんな男が学年トップの成績なのか未だに信じられない。


神崎は額をさすりながら、哀れそうな目で俺を見てくる。


何かを訴えかけたいのだろうが、それを汲み取ってやろうなどとは決して思わない。


「どうした? 捨てられた生ゴミみたいな顔して」


精一杯の嫌味を言ってやると、神崎はアングリと口を大きく開け、「せめて猫って言えよ!」と反論してくる。


猫?


確かに性格的には我侭な猫かもしれない。


だけど、猫ほど可愛らしいもんじゃない。


「生ゴミが嫌なら粗大ゴミか」


「せめてゴミから抜け出せよ」


「無理だろ」


冷たく言ってやると、神崎は諦めたように残りの食パンにかじりついた。


クーラーが室内を冷やしつつ地球温暖化に貢献するという矛盾を行っている中、俺は窓を開け放した。


ムッとした熱が一気に体を包み込み、部屋の中の冷気が少し緩和される。


時々こうやって空気を入れてやらないと、冷え性の優奈はすぐに足の指先をこすりはじめるのだ。