「ねぇ? 何を見たの?」


睨み顔を崩さないままの優奈に、俺は先ほどとは違う、『仕方が無い』という意味を込めてのため息を大きく吐き出した。


こんなにため息ばかりついていると、幸が逃げていきそうだ。


「オモチャだよ」


「……オモチャ?」


優奈が小首をかしげ、ショートのストレートヘアが斜めに流れた。


「俗にいう、大人のオモチャ」


「大人の……オモチャ」


呟いてから、少し目を空中に泳がせて、「やだぁ」と、口元を塞ぐ。


14歳相応の反応に、俺はホッと胸を撫で下ろした。


もっと、慣れたような反応をされたらどうしようかと、内心不安だったのだ。


優奈は頬を赤く上気させたまま、俯いてしまう。


「ま、そういうことだ」


神崎がその反応を見ながら、何度も頷く。


俺は優奈にメロンクリームソーダを注文してやって、自分の脳裏に浮かんだ昨日の光景を消し去った。


「大人が隠すものと、思春期の男がベッドの下に隠すものは似たようなもんだな」


ちょっとオーバーに首を振って、「あきれた」と呟く。


すると、また神崎は何度も頷いて、「ま、そういうことだ」と言った。


自分の親の性癖を知ってしまったのがショックなのか、さっきから目を合わそうともしない。


メロンクリームソーダが運ばれてきたのを最後に、この話は打ち切られた……。