「はい、お姉ちゃん」

「へ?」

「ライブに来た以上タオルは必須アイテムだから!!」

そう言って妹は透明な袋の中から真っ赤なタオルを取り出すと、ふわっと私の首にかけると、続いて自分用の真っ赤なタオルを袋から取り出して自分の首にかけながらモゾモゾとリュックの中に入れた大量のグッズの中からTシャツを取り出すと、まさかのここで着替えようとしたので、慌てた私が「着替えるならトイレで着替えてこい」と言うと、ちらりと隣の青年を見るなり妹は小走りで近くのトイレへと向かった。

それにしても…

「探せど探せど女ばっかりだなぁ」

男性もちらほらいたけれど、圧倒的に女性ファンが多く、妹のようにYUKIYA様と書かれた大きなデコレーションうちわを持ち歩く女性、YUKIYA命と書かれたTシャツを着たグループに親子で来ている人、ぼっち参戦という一人で来ている人、YUKIYA様と同じ髪色や髪型に衣装まで真似している人もいたりして、どれほど人気者なのかが伺えた。

「行ってくるね」

「おう」

聞こえた隣の会話の後、着替えを終えて戻ってきた妹と入れ違うように青年の彼女らしき女性はTシャツを片手に小走りで多分トイレへと向かって行った。

ああいう人と妹が仲良くなったらずっとYUKIYA様の話で盛り上がるんだろうなと思い、そんなファン友達とか作ればいいのにと、隣にちょこんと座りながらリュックに脱いだ服を詰め込んでいる妹を見た。

そんなのいらない。とか言いそうだなと思った。