すると妹は、この上なく嬉しそうな笑顔を見せた。
まるで長年探し続けた宝物を見つけたかのように、はたまたお腹を空かせて倒れこんでいたところに大好物を与えられたかのように笑いながら鞄の中からスマホを取り出して私に見せた。


「真っ暗だけど故障したの?」

「違う!あ、ちょ、待って」


タップタップターーップでもう一度私にスマホの画面を見せた。


「この度は…なんとかかんとかで、どったらこったら……あ、当選って書いてあるじゃん」

「そう!そうなの!!YUKIYA様に運命的な出逢いを果たしてから屈折2年!ついにYUKIYA様のライブに当選したの私!しかも自力だよ自力!凄くない?凄すぎるよね私!!北は北海道から南は沖縄まで開催されるライブには全て申し込むも落選続きで諦めかけてたけどさ…」


おいおい、北は北海道から南は沖縄までってさ、もしも当選してたら誰がその遠征費出すとこだったんだよ妹よ。と私の脳裏に両親の微笑ましい姿が浮かんだ。


「ついに当たったんだよお姉ちゃん!!しかも地元!ヤバイよね!つかヤバイヤバイヤバすぎるよーー!!地元でYUKIYA様に会えるとか…きゃああああだよ!!」


まぁ妹が嬉しそうで何よりだ。
何よりなんだけど……


「ねぇ、もしかしてそのライブに付き合えってこと?」

「え?そうだよ?他になんのライブがあるっていうのさ」


待て。待て待て待て待て。
ただでさえ暑い暑い中を会場まで行って帰ってくることを考えただけでも億劫だなって思ったのに、この妹と同じテンションの女たちがわーきゃーする中に混ざるわけ?
それをちょこ2時間ぐらい?


む、無理かも……


YUKIYA様、すまん。と思った。