ぞろぞろと人波に流されるように会場を出ると、19時を回っているにも関わらず、外はまだ薄明かるく、ライブによるものなのか、夏の暑さのせいなのか、すっかり汗がふき出していた。

「はぁあああ楽しかったああああ」

「それはなにより」

「ありがとね、お姉ちゃん」

「可愛い妹のためですから」

「お姉ちゃんもYUKIYAサマに惚れたぁ?」

「それは無い」

「うっわ…あんなイケメン生で見ても惚れないとかお姉ちゃんぐらいだよ。マジで目ぇ大丈夫?」

「いやいや、あの人とか惚れてなさそうじゃん」と適当に私が指を差す先にまさかの真面目青年が彼女らしき女性と立ち話をしていた。

「あれ?あの人タオル渡してくれた人じゃなかったっけ?」

「うん。席も隣だった」

「へぇへぇへぇ」

「なんか昔ボタン押したらそんな声出る番組あったよね」

「知らないよー。帰ろ帰ろ」

帰りは行きよりもうんと地獄の時間が待ち受けていることを私は駅に向かう途中で気づき、ファンで溢れるホームに妹と立ち、ホームに入ってきた電車に乗った時のぎゅうぎゅうさには、早く駅に着け!!と切に願っていた。

自宅に着いた時には二度と行きたくないなと思う私をよそに、妹はグッズが入ってパンパンのリュックを背負ったままリビングでくつろぐ両親にあーだのこーだのと初ライブでの感想を嬉しそうに話していた。

前にもこんな光景を見たような気がするなと思いながら私は自分の部屋へと静かに入った。