やっと会場内に入り、チケットに書かれた番号の席を二人で探していると、妹はスマホを手にまだ誰も立っていないステージ上をパシャパシャと撮ったかと思うと、すぐさまスマホの電源を切り、見つけた席の上に置かれた数枚のチラシらしきものをリュックに入れて椅子に座る姿を見て、私も同じようにスマホの電源を切ってから鞄にチラシらしきものを入れながら椅子に座った。

「撮影はご遠慮願いまーーす!!」

ざわつく会場内を妹は目を輝かせながら見渡していた。

それにしてもすっごい人、人、人だなと鞄から麦茶を取り出して飲んでいると、右の方から「すいませんすいません」と若干前屈みになりながら歩いてくる男女がいた。

女の方が私の隣の椅子に置かれたチラシらしきものを手にリュックを置くなり「間に合ったー」と言って、手にしたチラシらしきものを妹と同じようにリュックの中に入れた。

「これも入れといて」

「うん」

どうやら男の椅子に置かれていたチラシらしきものも女は男に頼まれてリュックに入れたようだ。と私がチラリと右側を見ると、ちょうど男が立ち上がり、その顔を見た瞬間に…

「まっ…」


真面目青年じゃん!!と思いながらよくよく女を見ると、やっぱり彼女らしき女性じゃん!!と同時に、まさかの席隣だったのねぇえええ!と心中で叫んだ。

そして、気づけば会場内の明かりがふあっと消え、ステージに照明が集中するなり座っていた人たちが一斉に立ち上がり、悲鳴にも似た歓声を上げた。

妹もまた、ペンライトを振りながら負け気と叫び声を上げていた。

さてさて、壁のポスターのキミのお出ましか。と私はゆっくりと立ち上がった。