「お姉ちゃんお姉ちゃん、あれ見て!」

言われれがままに妹が指差す方へと目線を向けると、誰かのサインが書かれた色紙が飾られてあり、一瞬誰だよ?と思ったけれど、すぐに色紙の隣に大きなYUKIYA様のポスターが貼られていることと、妹がきゃっきゃ言いながらスマホのカメラでサイン色紙とポスターを連写している姿を見て、ああこれがYUKIYA様のサインなんだなと思った。

しかしサインひとつでなぜそんなにテンションが上がっているのかと妹にさりげなく聞いてみると…

「YUKIYA様は滅多にサインとかする人じゃないからチョーチョー貴重なの!」と言った妹の言葉に私はなるほどなと納得した。


「ふぅ…」

妹はテーブルに届いたマンゴーてんこ盛りパンケーキを口に頬張りながら何やらスマホとにらめっこを続けていた。

その姿を季節のフルーツてんこ盛りパンケーキを食べ終えて残り半分ほどになったバナナジュースを飲みながらしばし見ていると、にらめっこしていたスマホをテーブルの上に置くなり、黙々とパンケーキを食べ始めた。

「そんなに慌てなくてもまだ十分時間あるんだからゆっくり食べな」

「うん」

そう言ったじゃないか妹よ。
なのになぜスピードを緩めずにマンゴーてんこ盛りパンケーキを完食したのかいまだにお姉ちゃんは謎だよ。

「よし、じゃあ行こっかお姉ちゃん」

「はいはい」

またしてもリュックを背負う妹の後をついて行くように私はお会計を済ませてカフェを後にした。


会場に戻ると、もう既に沢山のファンが入場の列を作っていた。