「開場入りまでまだ時間あるからどこかでなにか食べる?」

「うん。さっきここ来る途中にあった可愛いカフェ行きたい!」

「じゃあ行きますか」

よっと立ち上がってリュックを背負う妹の後ろを歩こうとした時、背後から声が聞こえた。

「あ…あの」

振り返ると隣に座っていた青年が「これ…忘れてますよ」と言いながら、妹にさっき首にかけられた真っ赤なYUKIYA様のマフラータオルを差し出した。

「え?あ、すいません!ありがとうございます」

ペコペコと頭を下げながら受け取ると、なぜが向こうもペコペコと頭を下げながら「いえいえ」と言っていた。

それを見ていた妹が私に駆け寄るなり「タオル必須!!」と私の手からタオルを取るなりまた私の首にかけた。

このままカフェに入るのは恥ずかしすぎないか妹よ。と思っていたけれど、いざ指定されたカフェに入ると、ほぼ同じタオルを首にかけながら妹と同じTシャツを着た可愛い女性たちが席を埋め尽くしていた。

全国で行われている数々のライブ会場付近にある店の中は、どこもかしこもこんな光景を目にすることが出来るのだろうか?と思いながら私は、とりあえず季節のフルーツてんこ盛りパンケーキとバナナジュースを注文した。