背を向けた彼女の前に回り込んだ。逃げてくれればいいものを彼女は依然として店の前から動こうとしない。陣取ったままなのである。正直ここまでかたくなな彼女の目的を知りたくなる。でも聞くのをやめた。

飲みすぎて気分が悪いから。早く帰って寝たい。もうほっといて帰りたい。そう思っていたら、彼女が口を開く。

「ねえ、ゲロの兄さんは、ここのホスト?」

「誰がゲロやっ」

「だって名前知らないし、ゲロ吐くし」

「アイル」

彼女はクスクス笑う。

「ダサい名前、キラキラネームもびっくりするよ」

彼女の言葉に顔が熱くなった。恥ずかしい。
確かに今は自分でもダサいと思う。付けたときはカッコイイと思っていたのに。