浴槽内に入り、シャワーヘッドを顔に向けて蛇口を捻った。プシュッという空気のぬける音がして、一気に流水が顔面にあたる。心地良い水圧。石けんの泡が排水口に流れる。接客業の中でもお客さんとの距離が近い。身体を入念に洗う。別に綺麗好きというわけではない。ただ単に体臭が匂うとか言われたくないから。どうせ、香水をつけるのだけれど。

ドンドンと鬼気迫るようにシャワー室のドアがノックされる。サナが恥ずかしさと焦りの入りまじった感情の声をあげる。

「早くあけてよー」

だからトイレのこと聞いたのに。ドンドンという音がガンガンっという音にかわる。おいおい壊す気満々じゃないか。鍵を開けるとサナが飛び込んできた。そして文句を言う。

「男の癖にお風呂、長すぎるよ」

どこか力ない表情。