「じゃあ何で殺さなかったんだよ」

「それは……頑張ってるアイル見てたら殺せないよ。いつも吐いて苦しそうな顔して、お客の一人一人の趣味合わせて、想像してたアイルと全然違うんだもん、殺せるわけないじゃない」

「想像ってなんだよ」

「ホストなんて、言葉と顔だけで女を食いもんにしてると思ってたのよ、何の苦労もしないでわたしの母を騙したと思ってたのよ」

「じゃあ何で出て行くんだよ」

「それは……母親と同じ人好きになるのは嫌だからよ」

サナの告白だと思ったオレは抱きしめたくなった。そしてそれを行動にうつした。サナを力いっぱい抱きしめた。

「何するのよ、離してよ」と、サナはじたばた身をよがらせる。オレは「うるさい口だな」そう言って、サナに唇を重ねた。長く熱い口づけ。サナの力が抜けて頬が紅く染まっていく。