タクシーの運転手に言った住所に近づいてきた。大まかな住所の場所はオレも何度か車で通ったこともありだいたいわかっている。番地といった細かい所までは知らない。タクシーの速度が徐行になり、もう目とはなの先だということが容易にわかった。

オレはタクシーの運転手に「ここで降ります」とつげた。運転手に代金を払う。財布からお札をとりだそうとすると、手が震えて上手くとりだせなかった。落ち着け、落ち着けと心の中で何度も呟いて、意思を強くもとうとした。震える手も力をいれておさまった。

何をこんなに緊張することがある。覚悟を決めただろうと自分に言い聞かせる。メモにかかれた住所の前に立ってオレは深呼吸をした。

でかくもなく小さくもない二階建ての一軒家の表札を見て、ここがサナの家だと確認して、インターホンを押そうと思ったが勇気が出なくて、一度、家から距離をとる。家を見上げて見ると二階の電気がついている。サナの部屋かも知れないと思った。勇気を振り絞りインターホンのボタンを押した。