女性の涙は武器だなんて思わない。沢山の女性を泣かせてきた。それに見慣れている。それでもサナの涙は武器だった。涙ながらに訴える女子高生は卑怯だ。

「帰る家なんてないんだから、出てけなんて言わないでよ」

「家出か？」

歯切れの悪い返事が返ってくる。

「う、うん」

サナはずずっと鼻をすすり、言った。

「食べるからさ、アイルの今日の仕事の話しきかせてよ」

「なんで？」

「騙された女性に感謝のお祈りを捧げるの」

サナは膝をつき、祈りのポーズをとった。わざとらしく。サナに詐欺師扱いされるのもどうかと思っている。少しはオレの苦労をわからせるのにちょうどいいかもしれないと思った。