サナを追いかけるべきなのにオレは歓楽街に逃げるように来ていた。歓楽街には的屋は並んでいない。いつもと同じ通常営業だ。ただし、人通りだけは、いつもの数倍は目についた。

ショートカットの女性を見ると、一瞬サナかと思いその女性の前に立ちはだかった。明らかに違う容姿を見て、オレは表情が曇る。突然目の前に知らない男性が立ちはだかった女性は驚いた表情をしている。

その表情を見て、オレは言い繕う。「ごめんなさい、知り合いと間違えました」

まるで下手なナンパみたいだ。女性はそう聞くと「ええ、びっくりしたわ」と、言った。その女性の隣にいた髪の長い女性がオレに話しかけてきた。

「間違えたって本当?見たところお兄さん飲み屋の人でしょ」

いかにも遊び慣れている感じの見た目をしている女性は言った。

「本当に人、間違いですよ」

髪の長い女性はまだ怪しんでいるようにみえる。「でも飲み屋でしょ?」と、言ってきた。遊び慣れた人には、オレがホストだと言うことが簡単に見破れるのか?いや、スーツにこの金髪で歓楽街を歩いていたらそう見えて当然かと思った。