放心状態のオレを見て、サナは「ごめっ」んなさいといいかけて、後ろに一歩下がると、そのまま向きを変えて走り去って行った。

去って行くサナの姿をオレは一歩も動けなくて、追いかける気力もなくて、ただただ、呆然と見送っていた。追いかけないといけないことはわかっているのに、追いかけて何を言えばいいのかわからない。サナの姿が見えなくなってオレは膝から力が抜けた。

「ハハ、何なんだよ、一体オレが何をしたって言うんだよ」

聞こえるはずのないサナにオレは問いかけるように叫んだ。公園にいた他の人たちが茶化す。なになに修羅場?そんな耳障りな声が辺りから聞こえる。

オレは逃げるようにして公園を後にした。サナが走り去って行った逆方向に。