サナの真剣な眼差しを受けとるのは嫌な気がして、オレは真面目に聞き返そうとは思わず、少しちゃかしてサナに言った。

「なにを今さらかしこまってんだよ、柄にもなく」

そう言うと、サナはうつむいて両手に持っているジュースを見つめた。そして、少しの間、押し黙っていたが、顔をあげて、ぽつりと小声で言った。

「ねえ、アイル、わたし、そろそろ家に帰ろうかと思うの」

「なんで?」

「いつかは帰らないといけないじゃない」

そんな事はわかっているけれど、嫌だ。だからオレはサナを精一杯ひきとめる。

「そんな事はない、ずっと一緒にいたらいいじゃないか?サナだって返る家がないって言ったじゃないか」

「うん、でもね、わたしは最初に言ったよね、目的が果たしたら出ていくって」

「目的ってなんだよ、ずっと今までいてサナの言う目的が果たせているとは思えない、今までの生活の中でサナの目的は、果たしたって言うのかよ」

納得がいかない。サナの目的が果たせてたとも思えない。それにいくらなんでも急すぎる。