隣に座ったオレをサナは視界にいれようとしない。サナは膝を抱えた腕に力を入れているように見える。オレから発せられる言葉を恐れているのかもしれない。そんなサナを見て、オレは用意しておいた別れのセリフを捨てることにした。

十七歳の少女に酷な事をしようとしていた自分が情けない。サナは言った。目的をはたしたらでて行くと。それまで、待つのが大人なんじゃないか。拾ったからといって簡単に捨てるような事はしてはいけない。

これがオレの出した結論で言い訳だった。

「サナ」そう呼ぶとサナはびくっと体が跳ねた。とうとうこの時がきたのかと思ったのかもしれない。

オレはサナの顔を両手で挟みこむようにつつんで、無理やりこちらを向かせた。サナの顔を真っ正面から凝視して、「ごめん、出ていけなんて言って、サナの事なんも考えてなかった、オレが悪かったから出ていかないでくれ」と、少しすがるように言った。サナがいつもの調子で生意気を言えるように。

サナは驚いた表情を一瞬みせて、すぐさま顔が紅く染まる。そして一泊置いて「仕方ないなぁ」と、言った。嬉しそうに目尻に涙を浮かべて。