サナの手を軽く握った。サナに触れたいという思いから。本当は抱きしめたかった。髪をさわりたかった。唇を重ねたかった。そんな気持ちを押し殺して、唯一サナに触れる事が出来た場所が手だった。

サナは嫌がる素振りはなく、軽く握り返してきた。オレは真剣な眼差しを向けて言った。

「サナ、おまえ、もう家に帰れ」

サナは何を言われたのか理解できない表情を浮かべる。

「どうして、そんな事いうの」

責めるようにオレに言うサナ。サナは握った手をを強く握りしめ「やだよ」と小さくささやく。そんなサナを見ると一瞬、心が揺らぐ。

「もう、無理だ」

「何が無理なの」

「……」

これ以上言う言葉がなくて沈黙した。サナはいつにもまして、大きな目に涙を浮かべている。ここで、いつもなら折れるのだけれど、今回は折れない。折れそうだけど。