サナは部屋を見やると、隅に移動して、ちょこんと座る。あることに気づいて声をあげた。

「ベッドが一つしかないじゃん」

「当たり前だ。一人暮らしの家にベットが二個もあるかっ」

押し入れから布団を出した。少しかび臭いが、それをサナの前に置いた。

「お前はこれでねろよ。布団で」。

ベッドは自分のだと主張する。かび臭いのは嫌だ。布団を渡して安心したオレは、つい、サナの目の前で、スーツを脱ぐ。

「ちょっと何脱いでのよっ、わ、わたし、そんなつもりないじゃないからっ」

どこか怯えたような顔をした。目に涙を浮かべている。なにか、勘違いしているようだ。