後ろ向きに歩くサナがバランス崩してよろける。「おっとっと」言いながら体制を整える。「危ないぞ」と、オレが注意してようやくサナは向き直る。そしてオレの横に並んで歩いた。
不意にサナが疑問を投げかけてきた。

「アイルは何でホストになったの？」

そんな事を今まで聞かれた事なっかたなと思う。職業なんてものは自分で選んだとしても、やりたい職業に就いたとは限らないだろう。出来そうな職業の中から少しの情報の中から選んだに過ぎない。

「興味があったから」

「女好きって聞こえる」

サナの言葉に反論はない。なのでオレは肯定した。

「そうかもしれないな」

そう言うとサナは少しだけムっとした表情をみせる。女好きを肯定したことが気に入らないのだろう。まあ実際の女好きとはかなり違うと自分では思っている。女好きの同僚を目にしているから。本当の女好きはホストに向いていない。人の客だろうがお構いないしに手を出そうとする。店の利益よりも個人の欲望を優先してしまう。