サナは食事を堪能したのか、目の前の肉をよりも周りのお客さんに興味があるようで辺りをきょろきょろと見回して小声で話しかけてきた。

「ここのお客さんってみんなアイルの同業者?」

数人の同業者が挨拶をして来たことで余計にそう思ったのかもしれない。実際には同業者の数よりも歓楽街に遊びにきたお客の方が多いだろう。朝方にくると断然同業者の方が多くなるのだけれど。今は同伴で利用している同業者が目につくくらいだった。

「いや、普通に食べに来てる人たちじゃない」

オレは曖昧に答える。サナに本当の事を言って、この人たちがどこのどんな店に行くのかを聞かれたくなかったから。十七歳にもなれば歓楽街にどんな仕事があるのかは知ってるだろうけど、憶測で言うようなことでもない。予想はだいたいできたけど。