祭りの音が大きく響き、家の中に侵入してきたのがわかる。


「もう、行かなきゃ」


桜子の体は水のように波うち、透き通る。


別れは悲しいハズなのに、祭りのかおりに頬がゆるむ。


「桜子――」


最後にふりむくと、小鳥のようなキスが待っていた。


「ありがとう」


桜子の体は魔法が溶けたように小さくなり、気がつけば小さなまぁるい水の玉になっていた。


そこから棒のような手足が生え、ピョンッと高く飛ぶとドアの隙間から祭りの中へと姿を消した――。