「手紙を合図に、おばあさんは毎回祭りの夢を見るようになった。その度に怯えていたのに、ある日パッタリと祭りを怖がらなくなった。さっきの桜子のように、本当に穏やかな表情で目覚めたんだよ」


おじいさんがそう言った時、遠くに祭りの鐘の音が聞こえてきた。


もうすぐこの地域を通過して行くだろう。


桜子は自分の心が弾んでいる事に気がついていた。


「おばあさんは、死んではいない。元の姿に戻っただけなんだ」


「祭り戦争の祭りは、水神祭なのね?」


「祭り戦争は、毎年違う祭りがやってくる。でも、桜子にその手紙が来たという事は、今年は水神祭に間違いないだろう」


やっぱり、そうなんだ……。


あの懐かしい感覚は、本当の自分を思い出したからだ。


祭りの音は容赦なくどんどん近づいてい来る。