桜子はおばあさんを知らない。


なのに、こうして隣同士で友人のように微笑んで映っている。


「おばあさんの写真を探したけど、出てこなかった。


それはつまり。おじいさんが写真を残しておきたくなかった。それか、撮らせようとしなかったんでしょう?」


何年経っても、何十年経っても年を追わないおばあさんのその姿を、おかしいと感じていたに違いない。


おじいさんは大きく息を吸い込んで長いため息をついた。


「その通り、おばあさんは人に変化した水神様だったんだ」


だけど、おばあさんも自分が水神様だという事を忘れていて、人間と何一つ変わらない生活を送っていた。


そんなおばあさんに異変が起こったのは、ある祭り戦争の一週間前だったという。


「それと同じような手紙が届いたんだ」


そう言って、桜子の持っている手紙を指差す。